山崎工務店の社長室には会長のご兄弟の写真が額に入れられて飾られている。9人兄弟は今では珍しいが、昔はそれほど珍しいことではなかった。珍しかったのは、聞けば、そこに写っている男性陣全員が、偶然にも建築関係の仕事についているというではないか。山崎工務店は大工を外注に頼らずに自ら育てているという、こだわりの工務店である。そんなこだわりを裏付ける、なにか血筋のようなものを感じさせるエピソードに思えた。


「うちでは大工になりたいという若者を雇って、最低4年以上、専属の棟梁のもとで修行させて一人前の大工に育て上げるという独自のシステムがあるんです」。そうおっしゃるのは山崎工務店専務取締役の山崎金作氏だ。よどみのない口調に誇りが感じられる。「中には育つ前にやめちゃったりする若い子も少なくはないけれど、これはいわば無形の設備投資みたいなものですからね。しっかりと伝統工法を身につけてもらって独り立ちさせてあげるんです。今じゃあプレカットのような簡単に部材を組み合わせられる工法がありますが、あれだって、うちでは若い子にはやらせません。ちゃんと継ぎ手や仕口を手刻みで加工できるようになってから、そういう合理的なものもやらせる。そうじゃないと、つぶしがきかないぶっつけ大工で終わってしまいますからね。逆にいえば伝統工法をしっかり身につけた大工なら、どんな仕事もできるんです。うちはそういうことをかたくなに守っているんですよ」。


コンピューター制御で、あらかじめ工場で木材を加工するプレカット工法や、軸組ではないツーバイフォー工法など、合理的な工法では、大工の高度な技量は要求されない。しかし、それでも、伝統工法をしっかり身につけた大工ならば、仕上がりやスピード、手順など、さまざまなところにも差が出るのだろう。しかしなによりも熟練した大工の技をなくしてはいけないという、山崎工務店の強い使命感が感じられる。大工の技は、熟練の大工から大工志望の若者へと現場で伝えられることで後世に生きていく。人を育てることと技を残すことは、いわば同義語なのだ。KINOIE SEVENの木の家づくりを支えているのは、こういう昔気質の大工の使命感なんだなあと、今では珍しくなってきた大きな下小屋(したごや)を案内してもらいながら、そんなことを実感した。


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山崎会長のご兄弟。男性陣は全員が建築関係だ。四男に あたる山崎会長は「現代の名工」を受賞している。

大工を育てることは、うちにとっての大切な設備投資 のようなものですから…と、山崎専務。

こんなのもやりましたと芹沢次長が見せてくれたの は、自社設計の「興徳寺本堂」。まさに技の結晶だ。

職業訓練校に通っていた若い社員が卒業の実習で つくった台。一本一本勾配が違うところに技がある。

大工を外注に頼らないのが山崎工務店の特長。 専属の大工は現在25名。

工事中の春日神社のお堂。小さいながらも、屋根の 反った形状に大工の技がいかされる。